蕎麦はどこの国発祥?歴史も解説!そばは世界中で食べられている
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スーパーには蕎麦の乾麺やインスタント食品が並び、今や日本人の常食とも言える蕎麦。
出汁の効いたつゆに、天ぷらなどをトッピングすることから、「蕎麦=日本」と感じる方も多いでしょう。
しかし、日本以外の国でもそばの実を使用した「そば料理」が存在します。
そこで今回は、そばの実の伝来や歴史、日本以外で親しまれている「そば料理」について解説します。
目次
蕎麦の歴史:縄文時代にはすでに蕎麦の実があった
そばの歴史は古くそばの実は、すでに縄文時代には日本に伝来されていたと言われています。
ワシントン大学の塚田松雄教授によると、島根県に一万年前の、高知県に九千三百年前の、北海道では五千年前の蕎麦の花粉が出ていると報告されています。
弥生時代後期の遺跡である登呂遺跡(静岡)では、蕎麦の種子がほかの作物の種子とともに発見されているため、縄文時代から変わらずこの時代も日本全国で栽培されていたのでしょう。
蕎麦の発祥・伝来は諸説あり
蕎麦が「どこの国から来たか」については、以下のように諸説あります。
- 朝鮮半島から対馬へ
- シベリアから北日本へ
- 中国から九州へ
(参考:日本伝統文化振興機構)
なかでも、中国から九州説が最も濃厚です。
京都大学名誉教授である大西近江教授は、1990年に栽培そばの野生祖先種を中国雲南省で発見し、祖先種の分布は雲南省・四川省・東チベットにまたがる三江地域に及ぶことも確認しました。
大西教授の栽培そば野生祖先種の調査は、栽培そばの起源シベリア説を否定。
中国三江地域が起源である説の提唱に繋がりました。
また、イネの伝来も縄文時代に朝鮮半島または中国から、北九州へと伝わっているため、蕎麦も同じルートを辿ったのではないかとされています。
現在の蕎麦の形は江戸時代に誕生
蕎麦と聞くと麺状の食べ物を思い浮かべますが、この食べ方が庶民に広がったのは江戸時代です。
室町時代にはそばの実を潰して、そばがきやそば餅として食べられていましたが、常食となったのは、現在の蕎麦の形が誕生してから。
蕎麦の原形は「そば切り」と言われていますが、いつどこで誕生したかは、現在も分かっていません。
新しい蕎麦の食べ方が広がると、江戸では次第にもともと親しまれていたうどん屋よりも、そば屋が多くなるほど人気の食べ物になりました。
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現在でも多くの国で蕎麦の実は食べられている
日本では、蕎麦の実を挽いて麺にして食べるのが主流ですが、世界でもそばの実はさまざまな食べ方で親しまれています。
ここでは、世界の「そば料理」をご紹介していきます。
フランスのガレット
ヨーロッパ、フランスのブルターニュ地方の郷土料理には生地にそば粉を混ぜたガレット(galette)があります。
包まないクレープのようなビジュアルですが、卵や野菜、生ハムなどをトッピングした料理です。
現在では、日本のカフェやレストランでも目にするようになりました。
材料はそば粉・水・塩だけなど、シンプルなものが多く、そば粉の香ばしさがしっかり感じられるでしょう。
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イタリアのピッツォケリ
出典:Nnaluci – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0による
続いてご紹介するのは、イタリアのパスタの一種であるピッツォッケリ(pizzoccheri)です。
蕎麦と小麦粉を混ぜた麺に、茹でたキャベツやジャガイモをたっぷりのチーズ・バターのソースで和えて食べられます。
麺は、二八蕎麦のようにそば粉8割・小麦粉2割の比率でつくるため、日本の蕎麦と親近感のある料理です。
日本では滅多に見ることのないピッツォケリですが、太打ちの田舎そばでアレンジしてみても良いでしょう。
東欧のカーシャ
カーシャ(kasha)はロシアの定番朝ごはんと言える料理です。
そばの実や小麦、米などの穀物や豆類などを水・ブイヨン・牛乳などで柔かく煮て、お粥やシリアルのように食べます。
カーシャに使う穀物のなかでも人気なのがそばの実です。
そのため、東欧ではスーパーなどでも手軽にそばの実が購入できます。
また、東欧のウクライナ系やポーランド系、東欧ユダヤ系の人口が多い、カナダやアメリカなどでも蕎麦の実を使ったカーシャは食べられています。
韓国の冷麺
日本でも人気の韓国の冷麺も、そば粉で作られています。
韓国冷麺は、とうもろこしやジャガイモのデンプンを加え、日本の蕎麦よりも弾力のある細い麺が特徴です。
冷麺の種類はいくつかありますが、ほとんどの冷麺にそば粉を使用しています。
日本でも、インスタント韓国冷麺などを取り扱うお店が増えているため、自宅で韓国の味を味わえるようになりました。
機会があれば、独特な食感とそば粉の香りをたのしでみましょう。
蕎麦が世界中で食べられている理由
ここまで、世界で親しまれているそば粉を使った料理についてご紹介しました。
ではなぜ、日本や原産国と言われている中国だけでなく、ヨーロッパなどでも親しまれているのでしょうか。
最後に、蕎麦が世界中で食べられている理由をご紹介します。
どんな土地でも育つ強い植物
第一に蕎麦はどんな土地や環境でも育つ植物と言われています。
縄文時代から日本の各地で栽培されていた蕎麦は、温かい地域から寒い地域まで育つ作物です。
実際に、イタリアのピッツォケリが名物である、ロンバルディア州ヴァルテッリーナ地区は寒い地域で土地が痩せており、小麦が育たなかったため、蕎麦の栽培を行ったといった歴史があります。
痩せた土でも生育し、収穫までの期間が短いとされているため、自給自足がメインであった時代には非常に重宝した作物であったと言えるでしょう。
栄養価の高い作物
そばの実は、以下のような栄養を豊富に含んでいるとされています。
- 炭水化物
- 必須アミノ酸のリジンを含むたんぱく質
- ビタミンB1
- カルシウム
- 食物繊維
- ポリフェノールの一種であるルチン
白米や小麦粉と比べて、栄養価の高い食材といえます。
人体に必要な栄養素を含んでいるため、各国で非常食・常備食として必要な作物だったのではないでしょうか。
日本でも奈良時代の書物「続日本紀」で、干魃に備える備蓄食糧として蕎麦の栽培を勅令したことが記されています。
それぞれの食べ方で親しまれている蕎麦
蕎麦は、縄文時代に中国から伝来したという説が有力です。
蕎麦を麺状にする食べ方が庶民に広がり、人気になったのは江戸時代のこと。
そして、形は違えど世界各国でさまざまな食べ方で親しまれています。
クレープのようにして食べたり、お粥のようにして食べたりと、小麦粉とお米の両方の使い方ができる穀物です。
栄養価が高いという蕎麦の最大のメリットを活かすべく、そばの実は余すことなく食べたいところです。
蕎麦を選ぶ際は、そばの実を丸々使っている「挽きぐるみ製法」の田舎そばを選んでみてください。
【参考】
農林水産省:https://www.maff.go.jp/j/agri_school/a_tanken/ine/01.html
日本伝統文化振興機構:http://www.jtco.or.jp/column/readings/?act=detail&id=69
wikipedia 蕎麦:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%95%8E%E9%BA%A6
書籍:粋を食す 江戸の食文化
書籍:一生役立つ きちんとわかる栄養学