【蕎麦猪口】焼き物の種類や有名な窯元を紹介!出雲が誇る出西窯についても解説
その他ブログ
冷たいそばやそうめんを食べる際に欠かせない蕎麦猪口。
日本全国には多くの陶磁器が存在し、さまざまな窯元で蕎麦猪口が作られています。
そこで今回は、焼き物の種類や全国の有名な窯元をいくつかご紹介します。
さらに、全国でも珍しい特徴のある島根県出雲が誇る出西窯について解説していきます。
「焼き物の蕎麦猪口がほしい」「どんな窯元があるか知りたい」という方はチェックしてみてください。
目次
蕎麦猪口とは?陶器と磁器の違いを解説
陶磁器の蕎麦猪口は、300年くらい前の江戸時代から作られている歴史の長い器です。
コップの直径は7cmほどで蕎麦猪口も同じくらいであり、つゆを入れるだけじゃない使い道ができるため、昔から雑器として重宝されていました。
陶磁器とは?
陶磁器とは、陶器と磁器の総称を指しています。
どちらも江戸時代に本格的な窯が開かれましたが、陶器のほうが一足先に登場しています。
陶器と磁器の違いは、主に以下のようなものです。
呼び方 | 材料 | 音 |
強度 |
吸水性 | |
陶器 | 土もの | 粘土>ガラス質 | 鈍い音 | 弱く割れやすい | 高い |
磁器 | 石もの | ガラス質>粘土 | 高い音 | 強い | 低い |
陶器は主に粘土で作られ「土もの」と呼ばれることもあり、叩くとゴンッといった鈍い音がします。
陶器を焼き上げる際に気泡ができるため、吸水性が高く、衝撃に弱く割れやすいため取り扱いには注意が必要です。
一方の磁器にも粘土は使用されていますが、長石・珪石というガラス質の含有率が高く、「石もの」とも呼ばれ、叩くとキーンといった高い音がします。
磁器の耐熱性は陶器よりも劣りますが、日常で使用する250度であれば問題なく、電子レンジや食洗機を使用できるものが多いのも特徴です。
また、陶器の柔らかさと磁器の強度を持ち合わせている半磁器も存在し、これらは陶石と土を混ぜて作られています。
陶磁器の蕎麦猪口は種類が豊富!
日本の伝統工芸品として指定されている陶磁器は現在32種類です。(2022年11月16日時点)
伝統工芸品に指定されている陶磁器はすべての都道府県に存在するわけではなく、北は福島県から南は沖縄県まで存在し、特に西日本の産地が多い印象です。
ここでは、32種類のなかから一部の伝統工芸品の特徴をご紹介します。
(参考:経済産業省|伝統工芸品|国が指定した伝統的工芸品240品)
美濃焼(みのやき)
岐阜県の美濃焼のはじまりは、古墳時代にはじまった須恵器(すえき)です。
その後、江戸時代末期から磁器製造がはじまり、現在では日本の和洋食器生産が国内生産の半分以上を占めています。
100円ショップでも美濃焼を見ることも多くなり、日常使いしやすくリーズナブルな商品も多く登場しており、はじめての蕎麦猪口としてもおすすめの焼き物と言えるでしょう。
美濃焼の窯元である「深山 miyama」では、グッドデザイン賞を5度も受賞しており、使いやすいデザインの作品が豊富です。
例えば、1つの器に仕切りを用いた「イゾラ パレットプレート」などは、ワンプレートやメインとソースをのせたりと、さまざまな用途で使用可能です。
また、「壽泉窯(じゅぜんがま)」では結晶釉を使用しており、焼成で起こる化学反応によって表情を変える作品を展開しています。
芸術的なものからポップなものなど、新しい作品を次々と生み出しています。
美濃焼はカップや取皿、プレートなど日常使いできるアイテムがほとんどです。
波佐見焼(はさみやき)
長崎県の波佐見焼は、江戸時代後期に日本一の生産量を誇る一大産地でした。
慶長4年(1559年)に李祐慶が帰化した際に築いた朝鮮式連房登窯の史跡が今でも原型を残しています。
「畑ノ原窯跡 」は400年前の原型を残している日本最古の磁器窯として国指定史跡として残されています。(参考:長崎県波佐見町観光協会|畑ノ原窯跡)
そんな波佐見焼の窯元は多く、今では食洗機や電子レンジを使用できる日用品が豊富です。
近代的なユニークなデザインや色合いが多く、陶磁器に関心のない方も手に取りやすくなっています。
そのため、カラフルな蕎麦猪口を求めている方におすすめです。
窯元でもある「白山陶器」は波佐見焼の代表格であり、縁の「ゆらぎ」が特徴的で器ひとつひとつに個性のある「シェルシリーズ」は1997年にグッドデザイン賞ロングライフ賞を受賞しています。
この「シェルシリーズ」は、かつてニューヨーク近代美術館でも販売された経歴のあるコレクションです。
有田焼(ありたやき)
日本で初めて磁器が焼かれたのが、佐賀県の有田焼。
有田焼は透明感のある白が特徴であり、お手頃なものから高級なものまで揃っています。
有田焼の蕎麦猪口は、約300年間同じ形状で作られており、市松模様やうろこのような網、唐草模様や季節を問わない竹など伝統的なモチーフが多く、有田焼の蕎麦猪口コレクターも少なくありません。
また、蕎麦猪口だけでなく湯呑や薄い器であるため酒器も多く誕生しています。
有田焼らしい器を求める方は、白い器に繊細な絵付けがされている湯呑や蕎麦猪口、プレートなどがおすすめです。
備前焼(びぜんやき)
日本には、平安時代から室町時代にはじまり、900年以上生産が続いている「六古窯」と呼ばれる窯が存在し、岡山県の備前焼のそのひとつです。
六古窯は、備前焼のほかに越前焼・瀬戸焼・常滑焼・信楽焼・丹波焼の6つが指定されています。
表面にガラス層を作り、つるつるとした質感と色味を付ける釉薬を使用せずに焼き上げ、粘土の鉄分により茶褐色になるのが大きな特徴です。
蕎麦猪口として使うだけでなく、焼酎を飲む酒器としてもおすすめの焼き物です。
室町時代から桃山時代には茶器が人気があった備前焼ですが、現在は「ぐい呑み」などのお猪口も人気です。
科学的根拠はないものの、備前焼で頂くお酒は口当たりがまろやかになるとも言われていますよ。
島根県出雲が誇る共同窯「出西焼」
昭和22年(1947年)に、柳宗悦の民藝運動から触発された農家の5人の若者によって誕生した島根県出雲の出西窯。
5人の若者はそれぞれ各地の窯元で修行を行い、各自の技術を伝え合い共同窯を設立しました。
そして今もなお、出西焼の窯元は出西窯のみであり、個人作家のいない共同窯として日常で使用する食器を生み出しています。
出西窯で使用される粘土や釉薬、焼成の際に必要な薪など、すべて島根県産のものを使用し、さらに土作りから窯焚きまでの工程すべてをこの工房で行っている、全国でも珍しい窯元です。
出西窯が影響を受けた柳宗悦の民藝運動の「民藝」は「民衆的工芸品」の略であり、陶磁器を含む日曜雑器の美“用の美”を唱えた運動です。
“そんな中、柳たちは、名も無き職人の手から生み出された日常の生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると唱え、美は生活の中にあると語りました。(引用:日本民藝会|民藝とは何か)”
そのため、出西窯が作り上げる作品はすべて食器であり“用の美”を継承しています。
出西焼は、西洋の陶磁器との相性も良い作品が多く、食卓に馴染みやすいデザインが特徴です。
出西窯と併設されている、直売所の情報は以下のとおりです。
【くらしの陶・無自性館の基本情報】
住所 | 〒699-0612 島根県出雲市斐川町出西3368 google map |
電話番号 | 0853-72-0239 |
営業時間 | 9:30〜18:00 |
定休日 | 毎週火曜(祝日を除く) |
駐車場 | あり(80台分の無料駐車場を完備|大型・中型バスは事前の連絡が必要) |
アクセス | 電車:JR出雲市駅よりタクシーで約10分
飛行機:出雲空港よりタクシーで約20分 車:山陰自動車道斐川 ICより約7分 |
出西焼の蕎麦猪口(切立湯呑)で楽しむ出雲そば「本田屋」
出西窯のある島根県出雲といえば、出雲大社や日本三大そばのひとつである出雲そばも有名です。
日本では旧暦10月を「神無月=神の無い月」と呼びますが、唯一出雲では「神在月=神の在る月」と呼んでいます。
これは、全国の八百万の神が出雲に集うことから由来されており、縁起の良い土地でもあります。
また、スサノオノミコトやオオクニヌシノミコトなどが登場する日本神話の舞台も出雲国です。
そんな縁起の良い土地で作られた組み合わせである「出西焼×出雲そば」を堪能してみてはいかがでしょうか。
出雲そばの特徴は「挽きぐるみ製法」
出雲そばの特徴は、そばの実を丸々使用した挽きぐるみ製法で作られた黒っぽい麺です。
そばの実の硬い殻まで余すことなく使用しているため、栄養価が高く、香りが強いのが特徴です。
2種類の伝統的な食べ方があり、ひとつは丸く朱い三段の割子に盛り、紅葉おろしやねぎなどの薬味と一緒に食べる冷たいそば。
もうひとつは、茹で汁と一緒に食べる温かいかけそばです。
もちろん、お取り寄せして自宅で食べる際は、ざるそばやお好きなトッピングを盛り付けて食べてもおいしく頂けます。
本田屋は無添加にこだわった出雲そばを製造
「お気に入りの蕎麦猪口で出雲そばを食べたい!」という方は、大正2年創業「本田屋」でお取り寄せしてみてはいかがでしょうか?
ざるそば・もりそばにぴったりな「細打ちざるそば」はじめ、春には「桜そば」や「茶そば」などの季節限定の商品もご用意しています。
出西焼同様に、島根県産の素材にこだわりたいなら、島根県産そば粉を100%使用した十割そばもおすすめです。
ぜひ一度、本田屋の無添加出雲そばをチェックしてみてください!
それぞれの想いをのせた陶磁器を楽しもう!
今回は、焼き物の種類や全国の有名な窯元をいくつかご紹介しました。
陶磁器の食器のシェア率が半分以上を誇る美濃焼や六古窯に指定されている備前焼など、日本の陶磁器における伝統工芸品は32種類も存在します。
また、蕎麦猪口も古くから日本で親しまれている食器であり、多くの窯元で作られています。
今では、伝統的な絵付けからポップなカラーまであり、好みにあった蕎麦猪口がきっとみつかるでしょう。
島根県出雲が誇る出西窯は、全国でも珍しい共同窯であり、作られているのはすべて食器。
さらに使用される粘土や釉薬、薪まで地元島根県の素材を使い、窯元ですべて一貫して行っています。
今では、素材や一貫して行う制作も全国では珍しくなっています。
そんな出西焼の蕎麦猪口(切立湯呑)は、同じく出雲が誇る出雲そばにもピッタリです。
ぜひこの機会に各窯元の想いがのった陶磁器をお楽しみください!
(参考書籍:【マイナビ文庫】くらしのやきもの図鑑ミニ)