捨てるなんてもったいない!栄養たっぷりなそば湯の歴史とアレンジレシピを紹介
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蕎麦をゆでたあとのゆで汁を「そば湯」といいます。
そば湯を白湯のように飲む方や、めんつゆと割って飲む方など、楽しみ方は人それぞれです。
蕎麦好きの方のなかには、そば湯を飲むまでが蕎麦というひとつの料理だという方もいます。
とはいえ、うどんやそうめんをゆでたあとのゆで汁は飲みません。
一体なぜ、そば湯が飲まれるようになったのでしょうか。
今回はそば湯の歴史や、そば湯を楽しむためのアレンジレシピを紹介します。
目次
そば湯の歴史
そば湯について記述されているもっとも古い書物は、1697年に人見必大によって記された「本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)」です。
江戸時代にはすでに、そば湯を飲んでいたことがわかります。
ただし、当時は「蕎麦をゆでたあとの湯」ではなく、「蕎麦を煮たあとの湯」と表現されています。
当時の蕎麦は、煮る料理だと認識されていたのかもしれませんね。
さらに、本朝食鑑では以下のように記述されています。
そば湯を飲まねば、必ず中傷(病にかかる)される。また、たとえ満腹になったとしても、そば湯を飲むと害はないといわれている。 島田勇雄和注による現代文/本朝食鑑
当時、蕎麦を食べたあとにそば湯を飲まなければ、病にかかると考えられていたようです。
一方で、江戸時代において蕎麦は庶民に浸透していた料理とも記述されています。
病にかかると記されていたのに、矛盾しているように感じますね。
つづいて、ほかの文献をふまえたうえで、さらに深くそば湯の歴史を紹介します。
参考:国立国会図書館デジタルコレクション/本朝食鑑 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2605286
蕎麦が毒だと思われていた歴史がある
1751年に日新舎友蕎子によって記された「蕎麦全書」という文献があります。
文献によると当時、麺類は毒だと考えている人もいたようです。
とはいえ、口にしてはいけないような毒ではありません。
蕎麦は痛みやすく、消化が悪い食べ物という認識から、注意して食べる必要のある料理だと考えられていたのです。
蕎麦全書には、以下のように記されています。
・蕎麦を食べたあとに体を温めれば問題がない
・蕎麦は食べすぎなければ体に害はない
当初は麺毒対策として、体を温める「豆腐のお吸い物」が蕎麦とともに出されていたそう。
とはいえ、お吸い物は調理する手間や材料費がかかります。
そこで注目されたのが、蕎麦をゆでるうえで必ずうまれるそば湯だったのです。
そば湯が蕎麦とともに出されるようになった理由には、以下のような複数の意味があったと考えられています。
・そば湯は体を温めることができる
・整腸剤や胃薬の効果があると認識されていた
・お茶は高価であったため、そば湯をお茶の代わりとして出した(おしな湯)
これらを理由に、そば湯が飲まれるようになったといわれています。
参考:Weblio辞書/蕎麦全書
https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E8%95%8E%E9%BA%A6%E5%85%A8%E6%9B%B8_
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そば湯の歴史のはじまりは信州
そば湯が飲まれはじめた理由を紹介しました。
残る疑問は、そば湯の発祥の地・そば湯を広めた地ではないでしょうか。
残念ながら現在、そば湯の発祥について記されている文献は発見されていません。
先に紹介した本朝食鑑では、すでにそば湯の食文化が広まっていたことが記されていたのです。
そこで注目したいのが、蕎麦全書。
蕎麦全書では、作者が信州諏訪部(長野県)で食べた蕎麦にもそば湯が出されたと記されていました。
同時に、蕎麦の発祥は信州であるととれる文章も見受けられます。
従って、そば湯を飲む食文化も、信州が発祥である可能性が高いといえるでしょう。
そば湯は捨てないで有効活用するのがおすすめ
そば湯が飲まれるようになった理由のひとつに、麺毒という病が関係していることがわかりました。
現代では、疲労回復効果が期待できるビタミンB1やB2、毛細血管を強くするルチン、体の発育を支える必須アミノ酸など、豊富な栄養素がそば湯に含まれていることがわかっています。
しかし、当時は現代のように化学技術が進んでいるわけではありません。
当時の人々はどのようにして、そば湯のもつ栄養素に気がついたのか不思議ですね。
以下の記事では、そば湯の栄養について紹介しています。
そば湯は飲むべき?たっぷり含まれる栄養やおいしい飲み方とは
体によい栄養を豊富に含んでいる、そば湯。
蕎麦をゆでたあとは捨てるのではなく、有効活用するのがおすすめです。
そば湯のアレンジレシピ
流して捨ててしまうのが勿体ない、そば湯。
白湯感覚でそば湯を飲む方や、残っためんつゆと割って飲む方もいます。
とはいえ、ただ飲むだけではそば湯をすべて使い切るのはむずかしいでしょう。
そこで、豊富な栄養をもつそば湯を有効活用するための、おすすめレシピを紹介します。
そば湯を活用すれば、より深みのある料理に仕上がりますよ。
ただし、そば湯はできるだけ早く使い切るように注意しましょう。
はじめてのそば湯は薬味プラスがおすすめ
はじめてそば湯を飲むという方は、薬味をプラスするのがおすすめです。
そば湯をめんつゆで割ったあと、七味や山椒を加えてみてください。
ピリっとした辛味と清涼感が、そば湯のクセをやわらげます。
お茶や白湯のような食後の一杯ではなくなるものの、ちょっとした汁物に感じることでしょう。
もちろん、蕎麦を食べる際の薬味を混ぜて飲むのもおすすめです。
わさびやネギを入れると、すっきりとした味わいのそば湯を楽しめますよ。
「体が疲れているときにおすすめ」そば湯レシピ
そば湯は、蕎麦の栄養が溶け出したものです。
蕎麦に含まれるビタミンB1は、疲労回復効果。
ビタミンB2には、肌や粘膜の保護・再生を促す効果。
そして、エネルギーの源になるたんぱく質が含まれています。
従って、風邪・夏バテ・花粉症など、体が疲れているときや、ダメージを受けているときに有効的といえるでしょう。
以下は、蕎麦の栄養素について紹介しています。
そばの栄養素には何がある? ダイエットに最適な食べ方も紹介
そば湯のおかゆ
材料 | 分量 |
そば湯 | 200ml |
ごはん | お茶碗1杯分程度 |
塩 | 小さじ 1/2 |
たまご | 1個 |
ネギ・生姜・ごま 等 | お好みで |
炊いたお米から簡単に作れる、おかゆです。
たまごを入れることで、そば湯の独特のクセをやわらげ、おかゆに風味深さを与えます。
そば湯のやさしい味わいは、風邪などで弱った体にしみわたることでしょう。
もし、もう少し濃い目の味わいにしたい場合は、和風の顆粒出汁や鶏ガラ出汁を混ぜるのもおすすめ。
そば湯のやさしい出汁は、和・中どちらの味付けにもぴったりです。
そば湯の湯豆腐
材料 | 分量 |
そば湯 | 200ml |
豆腐 | 1丁 |
めんつゆ | 大さじ3 |
ネギ・生姜・ごま 等 | お好みで |
ぽん酢などのタレ | お好みで |
超シンプルでありながらも、体にやさしく、お腹がふくれるレシピです。
そば湯のとろみの効果か、豆腐にそば湯の風味が染み込みます。
つけダレは、ぽん酢や湯豆腐のタレなどお好みのものを使用してください。
以下は、そば湯の湯豆腐に合う自家製つけダレレシピです。
自家製つけダレレシピ
材料
分量
醤油
100ml
みりん
50ml
料理酒
50ml
和風の顆粒出汁
適量
ネギ・ごま 等
お好みで
醤油:みりん:料理酒=2:1:1の割合で混ぜたものを、ひと煮立ちする程度火にかけます。
自家製つけダレは、べったりと豆腐につけて食べるよりも、少量ずつつけて食べるのがおすすめです。
醤油をぽん酢などの柑橘系に代えると、よりさっぱりとした味わいになります。
「ヘルシーなスイーツが食べたいときにおすすめ」そば湯レシピ
世の中には、たくさんのヘルシースイーツが存在します。
さらに、低カロリーでありながらも、ダイエットに効果的なたんぱく質が豊富。
とはいえ、手軽に手に入るヘルシースイーツに飽きてしまった…ということも少なくないはずです。
そんなときにも、そば湯は大活躍。
蕎麦は血糖値を上げにくい低GI値の料理であり、含まれている栄養はダイエットに効果的なものが多いのです。
以下では、蕎麦がダイエットに効果的である理由を紹介しています。
そば湯を有効活用して、家で簡単・安い・ヘルシーなスイーツを作ってみてはいかがでしょうか。
そばはダイエットに効果的? 健康的に痩せるためのポイントも紹介
そば湯クレープ
材料 | 分量 |
そば湯 | 200ml |
薄力粉 | 100g |
砂糖 | 15g |
たまご | 1個 |
牛乳の代わりにそば湯を使用することで、ヘルシーなスイーツに仕上げました。
材料をひとつ入れるごとに混ぜていけば、小麦粉をふるわなくても問題ありません。
毎日のご褒美として甘いクレープに仕上げたい場合は、フルーツ・ジャム・生クリームとともに。
モーニングやランチとして食べる場合は、野菜やチキンなどをはさむのもよいでしょう。
複数枚作って冷蔵庫で保管しておけば、数日間バラエティー豊かにそば湯クレープが楽しめますよ。
そば湯ゼリー
材料 | 分量 |
そば湯 | 250ml |
粉ゼラチン | 適量 |
きなこ・黒蜜 等 | お好みで |
黒豆 等 | お好みで |
寒天やくずきりの粉がなくても、ゼラチンを使えば簡単に和風ゼリーが作れます。
そば湯を鍋で温めて、沸騰させないように注意しながら粉ゼラチンを溶かすだけ。
耐熱容器に注いで、粗熱がとれたら冷蔵庫で冷やしてかためます。
しっかりと冷やしたあとは、黒蜜やきなこなどをつけて食べる和のスイーツです。
そば湯の歴史とアレンジレシピのまとめ
そば湯が広まったとほぼ同時期に、そば湯を飲む食文化も広まっていきました。
そば湯を飲む食文化も、長い歴史をもっているのですね。
とくに十割そばのそば湯には、ほかの蕎麦よりもより豊富な栄養素がしみ出ています。
今までそば湯を捨ててしまっていた方は、そば湯を有効活用してみるのがおすすめです。
紹介したレシピでそば湯を活用すれば、そば湯特有のクセを感じることなく、美味しく蕎麦の豊富な栄養素をとることができますよ。