出雲大社参拝の歴史と寄り添う「釜揚げそば」。香りも風味も抜群の一杯!
お蕎麦辞典出雲蕎麦
出雲そばには主に2つの特徴的な食べ方があります。
ひとつは「割子そば」といって、三段に重なった丸い漆器(割子)にそばを入れ、つゆを漆器にダイレクトに入れて味わう食べ方、もうひとつが今回ご紹介する「釜揚げそば」という食べ方です。
そばの風味がしっかり感じられ、そば湯も含めて堪能できる釜揚げそば。おいしいのはもちろん、ご家庭でも手間なしで手軽にいただけるのも魅力です!
釜揚げそばってどんなもの?
釜揚げそばとは、釜や鍋でゆでたそばを茹で湯(そば湯)と一緒にダイレクトに器に入れ、薬味とそばつゆをかけていただく食べ方です。
一般的に、ゆでたそばを盛る際には一度冷水で締めることが鉄則とされていますが、釜揚げそばではあたたかいまま器に盛るのがポイント。かけそばとの違いも“そばを水で締めない”ことです。
お店で釜揚げそばを注文すると、そばとゆで汁が入った器とそばつゆが入った徳利などが、別で提供されます。
このため、そばつゆの濃さを自分好みで調節することが可能。
好みの濃度になるまで、少しずつ味をみながら入れていくスタイルです。さらに、ネギやかつお節など薬味をトッピングし、風味をプラスするとさらにおいしくいただけます。
釜揚げそばが誕生した歴史
釜揚げそばが出雲の地で定着した由来を探ると、出雲大社参拝の歴史に行き当たります。
かつて出雲地方では、出雲大社をはじめ日御碕(ひのみさき)神社、美保神社、大山寺、一畑寺をめぐる「奥の院詣り」にて、門前にあったそば店でそばを食べるのが参拝客の楽しみだったそうです。
その際、井戸で汲んできた水を沸かしてそばをゆでていたのですが、水はとっても貴重なもの。“ゆでたそばを水で締める”という作業を省き、ゆでそばをそのまま器に盛って提供していたのだそう。これが現在に伝わる釜揚げそばの由来の一説とされています。
さらに、釜揚げそば水を節約できるという利点とともに、そばを茹でたとろみの付いたそば湯は麺に絡みそばをアツアツの状態で食べられるのもまた魅力です。冬の時期など、釜揚げそばが参拝客の冷えた体を芯から温めていたようです。
神事とともにある釜揚げそば
出雲大社では旧暦の10月17日と26日、全国各地から集結した八百万の神々がそれぞれの国に還られるといわれています。
その際の、神々をお送りする儀式を「神等去出祭(からさでさい)」といい、このときに食べるそばは伝統的に釜揚げそばとされています。これが縁で釜揚げそばは「大社そば」、「神去出蕎麦」や「お忌み蕎麦」とも呼ばれているのだとか。
出雲の人にとって、また出雲大社にとっても、釜揚げそばは大切な食べ物だといえるでしょう。
釜揚げそばをご家庭でおいしく食べる!
ゆでたそばを水で締める必要がないことや、かけそばのようにあたたかなつゆを用意する必要がないことなどから、ご家庭でも手間なし簡単にいただける釜揚げそば。おいしい食べ方をご紹介します。
鍋にたっぷりのお湯を沸かしたら、そばの袋の表示通りの時間でゆでます。ゆであがればアツアツの状態で器に盛り、そばがひたひたに隠れるぐらいまでゆで汁を入れます。そばつゆを好みの濃度になるまでかけて、お好みの薬味をトッピングすれば出来上がり。
薬味はネギや刻みノリが一般的ですが、食べ応えが欲しいときには長芋のすりおろしや卵黄を加えてもおいしいですよ。
ただし、スーパーなどで手軽の購入できるそばは注意が必要です。
干しそばにはあまり見かけませんが、ゆでそば、なまそばには賞味期限を長くするためにお酢やアルコールなどの「保存料」が含まれています。
そばを茹でるとその保存料はそばからそば湯の方へ流れ出るため、そばだけを食べるのであれば問題ありませんが、そのそば湯は使わない方が良いかもしれません。
パッケージに記載されている「一括表示」を確認し原料には何が使われているのか確認することをお勧めします。
そこでおすすめなのが、創業百余年出雲そばの老舗「本田屋」の出雲そば。
「食べて美味しい・身体に美味しい。」をモットーに余計なものは加えないそば本来の香りを大切に、食品添加物を使わないそばづくりを行っています。
ゆでた蕎麦とそば湯を一緒に味わい、そばの香りをダイレクトに感じてください。
出雲大社参拝の歴史と寄り添いながら、出雲の地でしっかりと受け継がれてきた釜揚げそば。湯気とともに立ち上るそばの香りは抜群で、何度食べても飽きないおいしさです。
出雲観光の際やご家庭で、ぜひおいしい釜揚げそばをお召し上がりください。