但馬の小京都”兵庫県・出石町で食べられる「出石そば」。小皿に盛られる独自の様式!
お蕎麦辞典そばの豆知識ブログ
日本全国、どんな小さな街であっても駅前や街中などでおそば屋さんを見かけます。
そばとは、それほど日本人にとって馴染み深いもののひとつではないでしょうか。
たくさん食べられているからこそ、その地域独特のそばの食べ方があります。今回はそんな地域に根ざしたそばのひとつ「出石(いずし)そば」をご紹介します。
出石そばの始まり
出石そばは、兵庫県・豊岡市の出石町で主に食べられているそばです。
出石町は、“但馬の小京都”とも称される城下町。かつて、江戸時代中期の1706(宝永3)年に泉藩主であった松平氏と、信州上田藩の仙石氏がお国替えとなったことで、信州伝来のそば打ちの技法と従来あったそば打ちの技法とが掛け合わされ、生まれたとされています。
屋台での持ち運びが便利なよう、直径6〜7cmの小皿「手塩皿」にそばを盛って提供するようになり、その後「出石焼」が始まってそばの文化と融合。
現在の、白地の小皿にそばを盛るスタイルが定着したようです。
出石そばってどんなもの?
出石そばのいちばんの特徴は、数枚の小皿でそばが提供されることです。1人前はだいたい5皿で、1皿の量はわんこそばの2〜3倍となる2、3口。足りなければ、1皿ずつ追加オーダーできる店舗が多いようです。
つゆは徳利に入って提供されることが多く、そば猪口につゆを注いで薬味とともにいただきます。薬味はねぎや大根おろし、わさび、とろろ、玉子など。まずはそばと塩だけで風味を楽しみ、その後つゆにつけてずずっといきましょう。
次にねぎやわさび、大根おろしを入れて爽やかな味わいを楽しみ、最後にとろろや溶き卵でまろやかなおいしさを堪能。
もちろん、締めのそば湯も欠かせません!
そば粉はそばの実の皮を含めて挽いたものを使用し、風味が際立つどっしりとした味わい。
茶褐色のそばが多いようです。
またつゆに使用するダシはカツオと昆布から取られ、奥深いうまみを感じることができます。
つゆをお皿にかけて食べ、食べ終えたら次のお皿につゆを移すという、出雲の割子(わりご)そばの形式でいただくこともあるようです。
店舗によって異なる小皿を楽しもう!
各店、そばにこだわりがあるのはもちろん、そばが盛られる小皿にも力を入れています。
小皿は、出石で作られる磁器の焼き物「出石焼」を使用するのが一般的。
透き通った白色が特徴で、浮き彫りや透し彫りなど精緻な飾りが彫られるほか、静謐な白さを持つ器なので絵付けも映えてじつに魅力的です。
白くて丸いお皿の底には模様が描かれていたり書が書かれていたり。
定番の絵柄はお店の屋号なのだそう。多くの絵柄を取り揃えているお店では、そばを食べ終わった時には底に見える絵柄の豊富さもまた楽しめますね。
なお出石町では、食べた小皿が箸を立てた高さまで積み重ねられれば1人前なのだとか。
ぜひ挑戦してみたいものです。
今でも50軒以上のそば店が立ち並ぶ出石町
出石町では現在もたくさんのそば店が営業中なので、観光で訪れた際にはぜひそば店巡りをしてみたいですね。
いずし観光センター内では、2,000円で購入できる「出石皿そば巡り巾着セット」というそば屋巡り専用のプログラムがあります。巾着の中に昔の貨幣のレプリカ「永楽通宝」が3枚入っていて、1軒につき1枚提出すればお店の出石そばと交換可能。3軒食べ歩いて1人前を想定しているので、お皿の数は通常の5枚よりも少ない3枚です。
巾着は持ち帰りもできるので、旅の思い出にもぴったり。
本場・出石町でたくさんのそばを食べてみてはいかがでしょう。