
福井県の郷土料理「越前そば」の魅力とは
お蕎麦辞典そばの豆知識
良質なそば粉の産地としても知られる福井県には、郷土料理として「越前そば」があります。
大根おろしを活用することが多いため越前おろしそばとも呼ばれ、農林水産省主催の郷土料理をテーマとしたイベント「農村漁村の郷土料理百選」にも選ばれています。
越前そばの始まり
そもそも福井県でそばが作られるようになったのは、室町時代の頃。越前朝倉氏7代当主であった朝倉孝景(たかかげ)が、合戦の際の籠城用食料として約75日間で収穫できるそばを栽培するよう通達したことに始まります。
その後江戸時代に福井藩家老であった本田富正が、そばに大根のすりおろしをかけたものを作らせたことが越前そばの発祥のひとつ。
そばと大根おろしの組み合わせは庶民にも広まり、そばの栽培と消費量がぐっと拡大しました。
全国的に越前そばの名が広まったのは昭和22年以降。昭和天皇が福井県にお越しになられた際、大根おろしのそばを2杯召し上がられたそうです。
このそばをお気に召された天皇は、皇居に戻られてからも懐かしみがられ、「越前のそばは大変おいしかった」とのお言葉を残されました。
このお言葉が広まったことで、“越前そば”として全国的に知られるようになりました。
越前そばってどんなもの?
そば殻まで挽き込んだそば粉を使い、つなぎには強力粉を使用することが多いようです。
強力粉にはグルテンが多く含まれるため、つるつる感よりももちもち感が出るのが特徴。しっかり噛み締めて食べるそばに適しています。
黒っぽくてもちもちとしたこのそばを茹でた後しっかりと冷水で締め、大根おろしをかけて濃いめのつゆでいただきます。
つゆはぶっかけたりつけ汁にしたりとさまざまですが、冷たい状態でいただくことが多いようです。
なお、大根おろしを用いるのは、つゆや醤油がない時代に大根汁につけて食べられていたことに由来します。
3種類の越前そば
福井県内でいただける越前そばには、3つの食べ方があります。
1. そばにつゆと大根をぶっかけてネギなどを盛る
2. 大根汁入りのつゆをそばにぶっかける
3. もりそばと大根おろし入りのつゆが別で提供される
一般的なのは大根おろしが豪快にのった「1」番ですが、「3」番であってもつゆをぶっかけて食べるのは問題ないので、それほど違いがないともいえますね。
「2」番は大根おろしが入っていない、少し特殊なスタイルの越前そばといえそうです。
越前そばに欠かせない大根おろし!
越前そばには、大根おろしが欠かせません!
大根おろしには薬味としての意味も込められ、ピリリと辛い辛味大根を用いるお店が多いよう。おろしてから時間が経つと辛味が少なくなるため、食べる直前にその都度おろすのが定番です。
辛味大根だけだと非常に辛いため、一般的な大根と混ぜ合わせて使うのもおすすめ。大根の皮に近い層がより辛いので、都度味見しながら仕上げるのが良いでしょう。
ぶっかける際には、つゆではなくダシ汁や醤油を用いる場合もあります。その際、大根汁を一緒にかけるとあっさり風味に。そばの風味と大根汁のうまみがかけ合わさり、シンプルながら奥深い味わいが楽しめます。
石臼挽きで仕上げたそば粉を使い、大根おろしの風味とそばの風味が相まってクセになるおいしさの越前そば。
大根おろしとそばを一緒にずるずるっとすすれば、口の中が幸せでいっぱいになります…!
越前そばはお店でいただけるのはもちろん、家庭でも気軽に食べられる郷土料理です。
ぜひご自宅でも試してみてくださいね。